積極的な理由ではないんだけど。

GoogleのスピンオフプロジェクトだったOrkutをスタートラインに、いろんなSNSを経験してきた。特に初期のmixiは素晴らしかった。実は僕はインターネット以前からFirstClassというグループウェアを使った「半分閉じた」ネットコミュニティをやっていたのだが、専用クライアントを使う面倒臭さがあって、なんとか似たものをブラウザベースで作れないかとメディアアーティスト/プログラマの江渡浩一郎くんに相談していた経緯がある。僕は作曲家なのでもちろん仕事ベースで本格的に話を進めていくはずもなく、ぼんやりしていたらOrkutが登場したというわけだ。Orkutはともかく、mixiを始めた時「ああ、自分で作る必要がなくなった」と思った記憶がある。

しばらくは完全にmixiにノックアウトされていた。足跡機能、赤旗機能(未読の表示)などの実装は言うまでもなく、とにかく90年代に「世界と繋がる!」はずだったインターネットが、実は大海すぎて行く先を見失うだけだったことがわかり、「実際世界と繋がるんだったら、まず第一歩は友達と繋がればよくね?次は友達の友達と繋がればよくね?そうこうしてるうちに世界に繋がるんじゃね?」という新たな方法論が出てきたというのが最大の衝撃だった。

mixiで最も興味深かったのは、インターネットを常に自分から見ているという体験である。友人の輪の中心は常に自分であり、その友人達も自分と近いクラスタの人たちが多くなる。だからサブカルの人は「mixiってサブカルの人多いよね」と言い、学生は「mixiって学生ばっかだよね」と言う。エキソニモの千房氏も触れていたが、SNS以降のインターネットは「インターネット」という一つの姿ではなく「それぞれのインターネット」として見えることになったのだ。

当時のmixiはお互いが日記にコメントをつけあうという行動によって繋がる仕組みになっていたが、実際日記を書くという行為はそれなりに面倒なことであり、また「面白い日記を書かなければいけない」というプレッシャーや自意識との戦いを回避してしまうユーザーも多くいたのも事実だった。そこにスっと登場したきたのがTwitterだ。

なんせ上限140字。「今なにしてる?」それだけを書けばいいことになった。それまでmixiで日記を書かなかった人がいきなり大量のツイートをしている場面も数多く見かけた。僕ら周辺の人たちはmixiを表舞台、Twitterには鍵をかけて楽屋として使っていたのだが、いつ頃からか(たぶん有名人が多く登場してきた頃からか)オープンにするのがデフォルトみたいな感じになってきた。フォロー申請がたくさん来るようになり、僕もそれまでのツイートの2/3くらいを削除して、ある日から公開に踏み切らざるを得なくなった。コントの如く楽屋の壁がバタバタっと倒れ、そこがいきなりまたステージになってしまったのだ。

Twitterは「ユーザ同士が承認しあわなくてもいい」という点でmixiとは根本的に異なる。mixiの様に対等の個人同士が日記という「ステージ」をお互いを見合うという形ではなく、ステージにいる誰かを客席から見ることが可能だ。初期はミニブログとか言われていたTwitterもいつの間にかSNSと呼ばれるようになったが、僕にはSNSの新しい精神性が一瞬にして崩壊してしまったように感じられた。その一方通行の繋がり方 (正確には繋がっていない) は、つまりはかつてのインターネットそのものだったからだ。

遅れてFacebookがやってくる。最悪のUIと金の匂いしかしない機能を携えて。自慢じゃないがFacebookの悪口なら何時間も言える。が、それはともかく、Facebookは基本的にはmixi的なSNSなので当然友人申請→承認という手順がある。ところがTwitter的な繋がり方を経験してきた人々は、見ず知らずの人に申請を出すようになってしまった。そもそもは140字という制限があってこそのスマートなUIだったタイムラインという方式を使う必然性もよくわからない。友人が、そのまた友人が撮った写真にコメントをつけると、なぜかこちらのTLにもそれが表示されてしまい、それをやめる方法が見当たらない。無茶苦茶としか言い様がない。mixi的なSNSTwitter的なSNSが共存するのはまだ許せるとしても、FBによってSNSの在り方がかき乱されてしまったことは非常に残念だ。僕は大抵新しいものの方に軍配をあげるタイプなのだが、SNSに関して言えば初期のmixiの発展形が今どこにも存在していないというのが本当に悲しい。

長々と書いてきたが、これはあえて長々と書いてるのだ。
というのは、SNSばっかやっていてブログをやっていなかった僕にはこのような文章を書く場所がなかったからだ。だから書いてる。

えーとつまり一言でいうと「ブログ始めました」ということになります。
今回は特に長かったけど、基本的に140字以上の文章はこちらに書くというスタンスでいます。
ほんとゴメン。長くて。